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仮面城(日文版)-第16章

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 そう考えた牛丸青年は、あいかわらず用心ぶかく、その階段をおりていった。階段をおりると、そこにまたさっきとおなじようなろうかがあったが、そこからまた、下へおりる階段がついているのだ。そして、いりみだれた足跡は、その階段をおりている。
 牛丸青年は用心ぶかく、その足跡をつけていったが、やがて階段をおりきると、足跡はこんどはろうかの奥のほうへつづいていた。
 つまり、この仮面城は地下三階になっていて、小さなビルディングくらいの大きさをもっているのだ。
 牛丸青年は内心舌をまいておどろきながら、足跡を伝ってろうかを奥へ奥へとすすんでいったが、とつぜん、ギョッとしたように立ちすくんだ。
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 牛丸青年はギョッとして、急いで物陰に身をかくすと息をころしてトランクを見つめていた。
 そんなこととは知るや知らずや、トランクのふたは三センチ、五センチ、七センチと、少しずつひらいていったが、やがて十センチほどひらいたかと思うと、そのままピタリと動かなくなってしまった。
 おそらくなかの人物が、あたりのようすをうかがっているのだろう。やがてその人物は安心したのか、トランクのふたを大きくひらくと、ヒラリとなかからとびだしたが、なんとそれは三太ではないか。
 ああ、船のなかで見つからなかったのもむりはない。三太は荷物のなかにかくれていて悪者どもにかつがれて、まんまとこの仮面城へしのびこんだのである。
 牛丸青年は三太を知っていた。いつか三太が悪者の手先につかわれて、成城にある大野老人のところへやってきたのをおぼえていたからだ。
 牛丸青年は物陰からとびだすと、やにわに三太におどりかかった。だれもいないと思ったこのろうかでいきなりひとにとびつかれたので、三太はギョッとしてふりかえったが、牛丸青年のすがたを見ると、
「ちがう、ちがう、ぼく、もう、悪者の手先じゃない。ぼくは文彦さんや、香代子さんのためにはたらいているんです」
 三太はひっしとなって叫んだが、むろん相手は口がきけないのだからそんなことばが聞こえるはずがない。
 牛丸青年は三太の手をとり、うしろ手にしばりあげようとした。三太はいっしょうけんめいにもがきまわる。
 と、このときだった。
 とつぜん、つきあたりの鉄のとびらがひらいたかと思うと、顔をだしたのは白髪の老人。ほおはこけ、目はおちくぼみ、からだは枯れ木のようにやせているが、どことなく気高い|威《い》|厳《げん》がそなわっていた。
「そこにいるのはだれか?」
 老人はしずかな声でたずねた。牛丸青年にはむろん、その声が聞こえるはずがないが、三太のようすにハッとふりかえると、びっくりしたように立ちすくんだ。
 そして、しばらく穴のあくほど、老人の顔を見つめていたが、やがてなにやらみょうな叫びをあげ、ばらばらと老人のそばへかけよると、いきなり、ガバとその足もとにひれふした。ああ、この老人はだれなのだろう。

     映画の秘密

 さて、こちらは金田一耕助である。
 加藤宝作老人の住居から、まんまと、銀仮面に逃げられた耕助は、なにを思ったのかその翌朝、等々力警部や文彦、さては香代子をともなって、自動車をとばしてやってきたのは、多摩川べりにある日枺庭蓼未橛八坤盲俊
「|井本明《いもとあきら》さんという監督さんはいらっしゃいますか?」
 と、受付の守衛にきくと、
「はあ、どういうご用ですか?」
「じつは警視庁からきた者ですが、ある事件の眨麞摔韦郡幛恕ⅳ激窑趣饩兢丹螭韦Δ颏辘郡い人激盲皮い毪韦扦埂
「ちょっとお待ちください」
 守衛は電話でしばらく話をしていたが、幸い井本監督はいたらしく、
「どうぞ、こちらへ」
 と、案内されたのは撮影所のひとすみにある応接室である。待つ間ほどなく井本監督がはいってきた。井本監督は、金田一耕助と等々力警部の名刺を見ると、まゆをひそめて、
「で、いったいどういうご用件でしょうか?」
「井本さん、いま枺紕訾欠馇肖辘丹欷皮い搿荷钌饯蚊孛堋护趣いτ郴稀ⅳⅳ胜郡O督なすったものですね」
「そうです。しかし、それがなにか……?」
「いや、なにもご心配なさることはないのですよ。井本さん、ぼくがおたずねしたいというのはあの映画のロケ伐绁蟮丐韦长趣扦工汀¥ⅳ欷悉嗓长钎恁暴‘ションされたのです?」
「さあ、どこでといったところで、あちこちへいきましたな。枺─谓纪猡扦趣盲繄雒妞猡ⅳ毪贰⑿胖荬丐猡い蓼筏俊¥饯欷椋痢钉ぁ罚埂钉骸筏扦趣盲繄雒妞猡ⅳ辘蓼工
 そういわれて、金田一耕助もちょっと困ったが、
「そのなかのある場面ですがね。ぼくにもちょっと一口にはいえないのですが……」
「ああ、そうですか。しかし、金田一さん、そのロケ伐绁蟮丐蛑毪趣いΔ长趣ⅳ胜摔ⅳ胜郡郡韦耸陇摔郅肆ⅳ膜韦扦工俊
「そうですよ。井本さん、あなたはなにもご存じなくおとりになったのでしょうが、あの映画のなかに、いま世間をさわがせている、銀仮面のアジトがうつっているらしいんですよ」
 それを聞くと井本監督がびっくりして、目を丸くしていたが、
「それは、それは……しかし、それならちょうど幸い、あの映画ならいまこのスタジオに一本あるはずです。さっそくうつしてみますから、どの場面だかおっしゃってください」
 撮影所にはどこにも試写室といって、できあがった映画をうつして見るへやがあった。金田一耕助の一行がそのへやへ案内されると、さっそく映写のじゅんびがととのえられ、間もなく、見覚えのある『深山の秘密』がうつしだされはじめた。金田一耕助をはじめ等々力警部、さては文彦や香代子まで息をころして、そこにうつしだされる場面を見つめている。
 やがて場面はしだいにすすんで、とつぜん、海岸にそそり立つ、高い絶ぺきがうつしだされたが、ああ、それこそはゆうべ、大野老人や文彦のおかあさんが、銀仮面の一味に追い立てられてのぼっていったがけではないか。
 しかし、耕助はそんなことは知らないから、だまって見ていると、すぐ場面はつぎにうつって、山道を走っていく大型バスがうつしだされた。バスのむこうには、のこぎりの歯のようにそびえる山茫⒛兢伍gがくれにちらほら見える湖水の表……。
「アッ、ここです。ここです」
 金田一耕助はおもわず叫んだ。ああ、きのう三太が映画を見ながら、仮面城、銀仮面と叫んだのは、たしかにこの場面ではないか。
「井本さん、いまの場面と、もう一つまえの絶ぺきの場面、あれはどこでおとりになったのですか?」
「ああ、あれですか、あれならば二つとも、伊豆半島の西海岸、|伊《い》|浜《はま》という村の付近で撮影したのですが……」
「な、な、なんだって、伊豆の伊浜だって?」
 だしぬけにそう叫んだのは等々力警部。金田一耕助はその声におどろいて、
「警部さん、あなた伊浜というところをご存じですか?」
「いや、いや、そういうわけじゃないが、けさ早く、沼津の警察から報告があったんです。ゆうべま夜中ごろ、伊浜の海岸で、正体不明の怪気船が、爆発沈没したという……」
 それを聞くと一同は、おもわずギョッと顔を見合わせた。

     仮面城襲撃

 伊豆の伊浜はその日一日大さわぎだった。なにしろ、すぐ目のまえの海の上で、汽船が一隻爆発、沈没したのだから、その|救護作業《きゅうごさぎょう》でたいへんだったのである。
 全村総出で、海上にただよっている船員たちを救いあげるやら、傷ついた遭難者の手当てをするやら、たきだしをするやら、さてはまた、流れよる船の破片をかきあつめるやら、それこそ涙ぐましいはたらきだった。
 むろん、村のひとたちは、この船がそんな悪い船だとは、夢にも知らなかったが、もし知っていたとしても、やはりおなじようなことをしたことだろう。これが海のおきてなのだ。相手がどんな悪人でも、いったん遭難したとあれば、それを助けるのが、海に住むひとびとのつとめなのだ。
 こうして一日じゅう、戦場のようなさわぎをしていた伊浜の海岸も、日が暮れて、夜がふけるとともに、またもとのしずけさにかえった。
 救難作業もあらかたおわり、けが人は病院へかつぎこまれて、村のひとたちはめいめいじぶんの家へひきあげていった。
 そして、あとにはポッカリと、春の月が空に出ていた。ゆうべ、宝石丸をのみこんだ海も、いまはなにも知らぬげに、のたりのたりと、のどかな波がうってはかえしている。
 夜の十時過ぎ。
 このしずかな伊浜の絶ぺき目がけて、沼津方面から、しずかに近づいてきたいっそうのランチがあった。
 ランチにのっているのはいうまでもなく、金田一耕助に等々力警部、文彦に香代子、ほかに、ものものしいいでたちをした武装警官がおおぜいのっている。
 金田一耕助の一行は、あれからすぐに沼津へ直行して、そこでいろいろ情報をあつめると、こここそ銀仮面のアジトにちがいないという見当がついたので、ランチをしたてて、ひそかに押しよせてきたのだ。
 それにしても、文彦や香代子の気持ちはどんなだっただろうか。沼津で聞いたところによると、爆発、沈没した船はたしかに宝石丸らしいのだ。
 と、すればそのなかにとじこめられているはずの、大野老人や文彦のおかあさんはどうしたか……それを考えると、ふたりは胸もはりさけんばかりの気持ちだったのである。
 やがてランチが、映画で見覚えのある絶ぺきに近づくと、波うちぎわから、だれかが懐中電燈をふって合図をしていた。近づいてみると土地の警官だった。
「ご苦労、ご苦労、そしてようすはどうだ?」
「いまのところ、かわりはありませんが、たしかにこのへんがあやしいのです。きょう村のひとたちに助けられて、病院へかつぎこまれた船員たちが、いつの間にやら、おおかた逃げだしてしまって、どこにもすがたが見えないのです。だから、きっと、このへんにかくれががあるにちがいありません」
 ランチからおりた一行が、無言のまま、あのあぶなっかしい階段をのぼって、やっと松林の付近まできたときだった。ほとんど同時に、松林の角を曲がってあらわれたのは、一台の高級車。警官たちがはりこんでいるとも知らず、あの大岩のまえにとまると、なかからヒラリととびおりたのは、おお、銀仮面ではないか。
 あのあやしげな銀の仮面を、キラキラと月の光に照らしながら、銀仮面は岩のそばへあゆみよると、しばらく岩の一部をなでていたが、と、ふいにギ谩ⅴ‘ッと気味の悪い音をたてて、あの大岩がしずかに動いていくのだった。
 それを見るなり、いきなり立った警官のひとりが、
「おのれ、銀仮面!」
 と、手にしたピストルのひきがねを引いたからたまらない。
 ダ、ダ、ダ螅
 と、ときならぬ悖工韦筏袱蓼颏浃证盲啤⒀窑摔ⅳ郡盲繌幫瑜⒒鸹à颏沥椁筏皮悉亭à盲俊
 おどろいたのは銀仮面である。ヒラリとマントのすそをひるがえしたかと思うと、コウモリのように、どうくつのなかへとびこんだが、と、つぎの瞬間、あの重い岩の戸が、ギ谩ⅴ‘ッとぶき
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