按键盘上方向键 ← 或 → 可快速上下翻页,按键盘上的 Enter 键可回到本书目录页,按键盘上方向键 ↑ 可回到本页顶部!
————未阅读完?加入书签已便下次继续阅读!
「さあ、話してくれ」と桐原はいった。
「うん。けど、何から話したらええのか……」
「全部や。全部話せ。たぶん俺を裏切ったんやろうから、まずはそのことからや」
桐原のいう通りだったので、友彦は返す言葉がなかった。空咳《からせき》を一つすると、ぼそりぼそりとこれまでの経緯を話し始めた。
桐原は顔の表情を殆ど変えなかった。だが話を聞くうちに怒りがこみあげてきているのは、そのしぐさから明らかだった。指の骨を鳴らしたり、時折畳を拳で殴ったりした。そして今日のことを聞いた時には、さすがに形相を変えた。
「死んだ? ほんまに死んでしもたのか」
「うん。何度もたしかめたから、間摺い胜ぁ
桐原は舌打ちをした。「あの女、アル中やったんや」
「アル中?」
「ああ。おまけにええ歳やからな、おまえとあんまりがんばりすぎて、心臓に来てしもたんやろう」
「ええ歳って、まだ三十ちょっとやろ?」
友彦がいうと、桐原は唇を大きく曲げた。
「寝ぼけてんのか。あの女は四十過ぎやぞ」
「……うそやろ」
「ほんまや。俺は何度も会《お》うてるから、よう知ってる。童貞好きのばばあや。若い男を紹介したのは、おまえで六人目や」
「そんな、俺にはそんなふうには……」
「こんなことでショックを受けてる場合やない」桐原はうんざりした顔をし、眉間に皺を寄せて友彦を睨みつけてきた。「それで、女は今どうなってるんや」
友彦は萎縮しながら、状況を早口で話した。さらに、警察の追及を逃れるのはたぶん無理だろうという見通しも述べた。
桐原は唸《うな》った。
「事情はわかった。相手の旦那がおまえのことを知ってるとなると、たしかにごまかすのは難しそうや。しょうがない。がんばって警察の取り眨伽蚴埭堡皮臁雇护扭工瑜Δ士谡{だった。
「俺、何もかも本当のことをしゃべるつもりや」友彦はいった。「あのマンションでのことも、当然話すことになると思う」
桐原は顔をしかめ、こめかみを掻いた。
「それは困るなあ。話が中年女の火撸Г婴坤堡扦蠝gまんようになる」
「けど、あのことを話さな、俺とあの人の出会いについて説明でけへんから」
「そんなもんはなんとでもなるやろ。心斎橋をぶらついている時に、あっちから声をかけてきたとでもいうたら済むことや」
「……警察相手に、うまいこと嘘をつく自信なんかないよ。いろいろと問い詰められてるうちに、ほんまのことをしゃべってしまうかもしれへん」
「もしそんなことをしたら」桐原は再び友彦の顔を睨みつけ、自分の両膝を叩いた。「今度は俺のバックにおる人間が黙ってへんやろな」
「バック?」
「俺が一人で、ああいう商売をしてるとでも思ってたんか」
「ヤクザ?」
「さあなあ」桐原は首を左右に曲げ、関節をぽきぽきと鳴らした。
そして次の瞬間、友彦は彼に襟首を掴まれていた。
「とにかく」と桐原はいった。「自分の身がかわいいんなら、余計なことはしゃべらんほうがええ。世の中には、警察よりも恐ろしいものがいくらでもある」
凄みのある声と口眨恕⒂蜒澶涎预し丹护胜胜盲皮い俊
それで説得は終了したと思ったのか、桐原は立ち上がった。
「桐原……」
「なんや」
「いや……」友彦は俯いた、言葉が出なかった。
ふんと鼻を鳴らし、桐原は踵《きびす》を返した。その時だった。そばの四角い箱にかけてあった青い布が、はらりと下に落ちた。中から現れたのは、友彦愛用のパ渐圣耄骏偿螗豫濠‘タだった。
「おっ」桐原は目を見張った。「これ、おまえのか?」
「そうやけど」
「なかなかええ機械を持ってるやないか」桐原はしゃがみこみ、友彦のパ渐圣耄骏偿螗豫濠‘タを観察した。「プログラムはできるのか」
「ベ伐氓胜榇筇濉
「アセンブラはどうや」
「少しできる」答えながら、こいつはコンピュ郡嗽敜筏い韦胜扔蜒澶纤激盲俊%侃‘シックもアセンブラも、コンピュ垦哉Zの名称だった。
「何か作ったプログラムはないんか」
「ゲ啶违抓恁哎楗啶浃盲郡椁ⅳ毪堡伞
「ちょっと見せてくれ」
「そんなん……今はそれどころやない」
「ええから見せてみろ」桐原は片手で友彦の襟首を掴んだ。
気迫に押され、友彦は本棚からファイルを取り出した。そこにはフロ隶悌‘トとプログラムを記した紙がまとめてある。それを桐原に渡した。
桐原は真剣な眼差しで、しばらくそれらを眺めていた。やがてファイルを椋Г浮⑼瑫rに自分の瞼も椋Г袱俊¥饯筏皮饯韦蓼迍婴胜胜盲俊
どうしたんやと声をかけようとして友彦はやめた。桐原の唇が、何かを呟くように動いていた。
「園村」やがて桐原が口を開いた。「助けてほしいか」
「えっ……」
桐原は友彦のほうを向いた。
「俺のいうとおりにするんやったら助けたる。警察に呼ばれることもない。あの女が死んだこととおまえとは、全然関係がないということにしたろやないか」
「そんなことができるのか」
「俺のいうこときくか」
「きくよ。何でもきく」友彦は首を縦に振った。
「血液型は?」
「血液型?」
「おまえのや」
「ああ……O型やけど」
「O型……好都合や。ゴムは使《つこ》たんやろな」
「ゴムって、コンド啶韦长趣
「そうや」
「使《つこ》たよ」
「よっしゃ」桐原は改めて立ち上がり、友彦のほうに手を出した。「ホテルの鍵を寄越せ」
[#ここから7字下げ]
7
[#ここで字下げ終わり]
友彦のもとへ刑事が来たのは二日後の夕方だった。白い開襟シャツを着た中年の刑事と、水色のポロシャツを着た刑事の二人組だった。彼等が友彦のところへ来たということは、やはり夕子の夫が彼女と友彦の関係に気づいていたということになる。
「友彦君にちょっと訊きたいことがあるんですわ」と開襟シャツの刑事がいった。どういう事件に関することかはいわなかった。最初に応対に出た房子は、警察の人間が来たということだけでおろおろしていた。
友彦は近所の公園に連れていかれた。日は落ちていたが、ベンチにはまだ昼間の熱が残っていた。そのベンチに開襟シャツの刑事と並んで座った。水色ポロシャツの男は、友彦の前に立った。
ここに連れてこられるまでの間、友彦はなるべく口をきかないようにしていた。不自然に見えたかもしれないが、無理に平静を装おうとはしなかった。それが桐原のアドバイスでもあった。
「高校生が刑事を前にして平然としとったら、そっちのほうがおかしいからな」と彼はいった。
開襟シャツの刑事はまず彼に一枚の写真を見せ、「この人を知ってるか」と尋ねた。
その写真には花岡夕子が写っていた。旅行に行った時のものだろうか、後ろに青い海が広がっている。夕子はこちらを見て笑っていた。髪は少し短めだった。
「花岡さん……でしょ」友彦は答えた。
「下の名前も知ってるやろ」
「夕子さん、やったかな」
「うん、花岡夕子さんや」刑事は写真をしまった。「どういう関係?」
「どういう関係て……」友彦はわざと口ごもった。「別に……ただの知り合いです」
「せやからどういう知り合いかと訊いてるんや」開襟シャツの口眨戏gやかだが、少し苛立ったような響きがあった。
「正直にいうてみろや」ポロシャツの刑事がいった。口元に嫌味な笑いが張り付いている。
「一か月ほど前、心斎橋を歩いてる時に話しかけられたんです」
「どんなふうに?」
「時間が空いてるんなら、ちょっとお茶に付き合ってくれへんかって」
友彦の答えに、刑事たちは顔を見合わせた。
「それで、ついていったんか」と開襟シャツの刑事が訊いた。
「奢ってくれるていうから」と友彦はいった。
ポロシャツが、鼻からふっと息を吐いた。
「茶を飲んで、その後は?」開襟シャツのほうがさらに訊いてくる。
「お茶を飲んだだけです。店を出た後は、すぐに帰りました」
「なるほどな。けど、会《お》うたんはその時だけやないやろ」
「その後……二回会いました」
「ほう、どんなふうに」
「電話がかかってきたんです。今、ミナミにおるけど、暇やったらまたお茶に付き合《お》うてくれへんか、と……まあ、そういう感じです」
「最初に電話に出たのは、お母さんか」
「いえ、たまたま二回とも僕が出ました」
友彦の答えは刑事にとっては面白くなさそうだ。下唇を突き出した。
「で、行ったわけか」
「行きました」
「行ってどうした。茶を飲んで帰っただけか。そんなことはないやろ」
「いえ、それだけです。アイスコ药‘を飲んで、ちょっとしゃべって帰りました」
「ほんまにそれだけか」
「それだけです。それだけやったらあかんのですか」
「いや、そういうわけやないけど」開襟シャツの刑事は首筋をこすりながら、友彦の顔をじろじろと眺めた。少年の表情から何かを読み取ろうとする目だった。「君の学校は共学やろ。女友達も何人かおるはずや。なにも、あんな年増女の付き合いする必要はないんと摺Δ
「僕は暇やったから付き合《お》うただけです」
「ふうん」刑事は頷いたが、信用していない顔だ。「小遣いはどうや。もろたんか」
「受け取ってません」
「それはどういう意味や。金は渡されたけど、受け取ってないという意味か」
「そうです。二回目に会《お》うた時、花岡さんが五千円札をくれようとしたんです。でも受け取りませんでした」
「なんで受け取れへんかったんや」
「何となく……そんなお金をもらう理由がないし」
開襟シャツの刑事は頷き、ポロシャツの刑事を見上げた。
「どのへんの喫茶店で会《お》うとった?」ポロシャツが尋ねてきた。
「心斎橋にある新日空ホテルのラウンジです」
これは正直に答えておいた。夕子の夫の知り合いに目撃されていることを知っているからだ。
「ホテル? そんなところへ行って、ほんまにお茶だけで済んだんか。そのまま二人で部屋に入ったんと摺Δ螭攻荪恁伐悭膜涡淌陇慰谡{は乱暴でぞんざいだった。主婦の暇つぶしに付き合っていた高校生を心底馬鹿にしているのだろう。
「お茶飲みながら、ちょっとしゃべっただけです」
ポロシャツは口元を歪め、ふんと鼻を鳴らした。
「一昨日の夜やけど」開襟シャツの刑事が口を開いた。「学校が終わってから、どこへ行った?」
「一昨日……ですか」友彦は唇を舐めた。ここが勝負どころだ。「放課後、天王寺の旭屋をぶらぶらしてました」
「家に帰ったのは?」
「七時半頃です」
「それからはずっと家におったんか」
「そうです」
「家族以外とは顔を合わせてないわけやな」
「あ……ええと、八時頃に友達が撸Г婴死搐蓼筏俊M弗楗工瓮┰趣いε扦埂
「キリハラ君? どういう字?」
友彦は桐原という字を刑事に教えた。開襟シャツの刑事はそれを手帳にメモし、「その友達は何時まで家におった?」と尋ねてきた。
「九時頃です」
「九時。その後は何をしてた」
「テレビを見たり、友達と電話でしゃべったり……」
「電話? 誰から?」
「森下という奴です。中学時代の同級生です」
「電話でしゃべってたのは何時頃?」
「十一時頃にかかってきて、十二時過ぎまでしゃべってたと思います」
「かかってきた? 向こうからかかってきたわけ?」
「そうです」
これにはからくりがあった。その前に友彦のほうから森下に電話をかけていたのだ。彼がアルバイトで留守だということを知っていて、わざとかけ